勝ちに不思議な勝ちあり
負けに不思議な負けなし
先日逝去されたプロ野球の野村克也元監督の名言として、知っている方々も多いでしょうが、実は、江戸時代後期の長崎の平戸藩主、剣術の達人だった松浦静山(まつうら・せいざん / 1760~1841)の名言です。
野村克也元監督は、その名言を格言としてプロ野球での試合の勝ち負けで使っていたということになります。
この言葉を額面通り、理解しようとすると、「負けた時、必ず負ける原因や理由がある。しかし、負ける要因があっても、いろんな外的要因が重なることで勝つこともある。だから勝負に勝ったとしても、おごることなく、さらなる努力が必要である」という風に受け取りやすいでしょう。
しかし、松浦静山が伝えたかった真意は、もっと深遠で、まさに成功哲学、易学、運命学に通じる内容でした。
長崎県北西部にある平戸島を中心とする平戸は、司馬遼太郎が絶賛するほど、日本有数の美しい城として知られる平戸城があり、その平戸城の一国一城の主人だったのが、松浦静山です。
福岡市内から西方位へ吉方旅行、吉方取りをしたい場合、平戸は温泉もあり、海の幸も豊かなので、絶好の吉方パワースポット。美しい名城・平戸城や松浦静山の生き様を通して、開運のきっかけを創られると良いでしょう。
剣術の達人でもあった松浦静山は、剣術書『剣談』で「道に従い、道を守れば、勇ましさがなくても必ず勝ち、道に背けば必ず負ける」ということを説いています。
天保十二年(1841年)6月29日、『甲子夜話』の作者として知られる肥後平戸藩・第9代藩主の松浦静山。
▲平戸藩の窮状を救った第9代藩主の松浦静山は剣術の達人でもあった
第9代平戸藩主を継ぐべきだった父=政信が早世し、急きょ、第8代藩主であった祖父=誠信(さねのぶ)の養嗣子となって、その後を継ぐ事になりました。
安永四年(1775年)、16歳で藩主の座についた時、平戸藩は、大変な財政難。
身分に関係なく適材適所に有能な人物を抜擢し、藩校「維新館」を設立しての人材育成などを実行し、経費節減するための行政改革を行って倹約を徹底させました。
農民の農業離れを防ぐため、貧農への補助を厚くして、備蓄米や金銭、農具の貸出などを行って税収アップを図ります。
幕政への参画の野望を持ったが果たせず、改革が成功して落ち着きをみせた文化三年(1806年)、47歳で、息子の熈(ひろむ)に家督を譲って隠居し、江戸の本所(現・東京都墨田区)にある平戸藩の下屋敷で執筆活動に励んで第2の人生が始まります。
随想集として有名な文政四年(1821年)11月の甲子(きのえね)の日に書き始めた『甲子夜話(かっしやわ)』と名づけられた膨大な執筆内容。正編100巻、続編100巻、三編78巻にもなる膨大な量の随筆で、江戸時代を代表する随筆集です。昭和になって後に復元出版され、有名になりました。
▲『三勇図』(松浦史料博物館蔵)。右端が松浦静山
静山は、これ以降、約20年にわたって精力的に書き綴ります。
甲子夜話では、徳川家康に関する逸話から、田沼意次時代から寛政の改革時代にかけての政治、自身の青年時代の回想、諸大名や民衆の暮らしぶり、町の噂、ろくろ首の奇談まで幅広い。特に、同時代の大盗賊・鼠小僧については逮捕から処刑までが詳細に記されています。
蘭学にも関心が強く、入手したオランダ製の地球儀が松浦史料博物館に保管されています。
17男16女に恵まれた子だくさんな静山は、十一女・愛子は公家に嫁ぎ慶子を生み、この慶子がのち孝明天皇と結婚し明治天皇を生んでいます。
静山は明治天皇の母方の曽祖父にあたり、天皇家との所縁があることも、彼の生き様が関心を持たれる理由でもあります。
勝ちに不思議な勝ちあり
負けに不思議な負けなし
勝負は時の運ですが、偶然に勝つことはあっても、偶然に負けることはない。
失敗の裏には、必ず落ち度、敗因がある。
「たまたま運が良くて勝った」というのも、運を味方につけるような努力をしていたのかもしれないし、知らないうちに徳を積んで勝利を味方につけることもある。
運の善し悪しを決めるのは、日々の過ごし方次第ということになります。
「人間万事塞翁(さいおう)が馬」であり、勝った負けたで一喜一憂してはいけない。
そこからいかに教訓を得て学びとるのかが大切ということになります。
何をもって成功というのか失敗かは、人それぞれ。
二度と同じ過ちを犯したくないなら、失敗から学ぶべきではないか。
善因善果。悪因悪果。
失敗から学ぶ成功哲学こそ、人生の哲理ということになります。
ちょっとした手抜きが勝敗を分け、先手を取る準備と努力をしていれば、危機を察知する直感力は冴えてきて、万難を排して物事を達成していける。
これは、勝敗を決する武道だけでなく、易学に通じ、運命学に通じる世界です。
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